「わあ!見て!虹が出てる!」
蘭の声に釣られ、コナンも振り返った。見上げた空には、美しい七色の孤が描かれていた。
それに、浮かべられた満面の笑み。さっきのことなど、どこかに吹っ飛んでしまうような。
蘭がすっかり元気になった様子を見、コナンは安堵して微笑を漏らした。
「ねえ、コナン君」
虹を見上げながら、蘭は言った。
「なに?」
コナンは蘭の横顔を見上げた。
「コナン君は、ずーっと一緒にいてくれるのよね?」
「え!?」
蘭に言われ、コナンは思わず素っ頓狂な声を上げた。
「さっき言ってくれたじゃない」
新一に戻ってしまうと、それは嘘になってしまうが、よくよく思い返してみれば、
『新一にーちゃんが会えないなら』
と自分で言ったような気がする。それはすなわち、新一に戻れなかったら、ということにも取れるから、あながち嘘ではない……。
「う、うん…………」
コナンの返事を聞き、蘭はにっこり笑って言った。
「わたしねぇ、コナン君だったらいいかなー、なんて、ちょっと思っちゃった!」
「へ……………?」
コナンは目をぱちくりさせて、蘭の言葉の意味を考えたが、今ひとつよくわからない。
「………それって……どういう…………」
「さー、晴れてきたから、帰ってお洗濯でもしよっかな〜♪ コナン君も手伝ってね!」
思い切り蘭に遮られ、コナンは頷くしかなかった。
「うん……」
さっき蘭が言ったことが、どういうことなのか、結局コナンは理解することができなかったが、すっかり元気になってにこにこしている蘭を見ると、そんなことはもうどうでも良くなってきた。
(ま、いっか………)
張り切って歩いていく蘭の背中を追いかけながら、見上げた空はもうすっかり青かった。
夏はもう、すぐそこまで来ている。
“雲が晴れたら”
草紙剥
<<BACK